こちらの記事では、株式会社Hackusha が公開しているポッドキャスト番組「ハクシャヲカケルラジオ」の台本資料集を公開します。
トークの内容で興味のある箇所があればこちらの資料も補足としてご覧ください。
ポッドキャストはSpotify, Apple Podcast, Youtube music, Amazon music に配信中。
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第1回配信テーマ:
「デザインって結局何なん?
〜お金儲けもできて社会を変えることもできる。かもしれないデザインの世界〜」
エピソード2 サブテーマ:
意味広がりすぎ?!デザインの歴史
本編目次はこちら
①デザインを歴史から俯瞰してみる
- 近代デザインの発祥。産業革命:約1760年 〜1840年頃
産業革命に伴い、印刷技術が進化し、大量生産が可能となる。これにより、グラフィックデザインが発展し、広告、ポスター、雑誌、本などでデザインが重要な役割を果たすようになった。
ウィリアム・モリス
「アーツ・アンド・クラフツ運動」(美術工運動)1880年代〜
産業革命の結果として大量生産による安価な、しかし粗悪な商品があふれ、モリスはこうした状況を批判し、中世の手仕事に帰り、生活と芸術を統一することを主張した。モリス商会を設立し、装飾された書籍やインテリア製品(壁紙や家具、ステンドグラス)などを製作。
近代産業社会への批判に基づく、人間性の復権を提唱。今日のデザインにつながる原点 - モダニズムと機能主義:20世紀初頭から1960年代頃
モダニズムは20世紀以降に起こった芸術運動、特に第一次世界大戦以後(戦間期)の1920年代を中心にした前衛的な動向を指す。従来の19世紀芸術に対して、伝統的な枠組にとらわれない表現を追求した。
モダニズムと機能主義の運動がデザインに登場。この運動は、合理性、機能性、単純さに焦点を当て、デザインを美的な要素だけでなく実用的な要素として捉える
バウハウス
工業製品が生活に浸透していく中、1919年ドイツ ワルマールに創設された造形芸術機関であり運動。わずか14年の活動だったが、モダンデザインの基礎を作り上げた。
建築を頂点としながらも、工芸、写真、デザイン、美術など総合的教育を行っており、すべての芸術の統合を目指す教育システムを確立。現在においても様々な分野に多大なる影響を与えた。
ミニマルな美の追求によって近代デザインの様式が生まれた。
機械技術時代の様式美。
平面や直線といった単純なものの繰り返しは、機械技術によって量産可能とし、それを美として様式化したと捉えられる。
モリスは機械化を否定したことに対して、バウハウスは機械による大量生産を前提とした工業社会におけるデザイン。シンプルな機能美という概念によって理想的な暮らしを作り出そうとした。
様式美の確立と、その背景にある社会の改革運動としての思想性に高い価値がある。
単に新しいデザインを生み出すだけでなく、デザインが生活に入り込むことで、社会そのものを変えていかなくてはならないと考えていた。 - ヨーロッパのデザイン:芸術運動と同時に社会運動
ヨーロッパの近代デザインが持つ思想性は、原点とも言えるレオナルド・ダ・ヴィンチにも通じている。彼は自らをヒューマニストと称した。芸術家は科学者であり、かつヒューマニストでなければならぬ。とした。芸術家は科学的合理性に立脚し、なおかつ客観性をもって社会に貢献する使命を持った存在であると位置づけた。
近代デザインのミッション「よりよい生活を創造すること」。デザインによる社会改革を目指す考え方は、極めてヨーロッパ的。ブランドを発明。 - アメリカのデザイン:生活風景に夢を与えるコマーシャルデザイン
モノの実体は変わらなくとも、外観のスタイリングを改善することによって新たな消費を換気し、夢の生活を提案した。デザインを社会的に正しい、正しくないと考えるのではなく、売れるデザインこそ正しいデザインとする考え方。アメリカ的な消費文化を築き上げる。
代表的デザイナー「レイモンド・ローウィー」。著作「口紅から機関車まで」において、夢のデザインが消費を刺激して商品をヒットさせるというスタイルを明確化した。身の回りになるあらゆるものをデザインの対象として、夢を与える。デザインをマーケティング手法の一つとして研究 - ポストモダンデザイン:1970年代以降
ポストモダンデザインは、モダニズムに対する反動として出現し、多様性、個性、装飾性が重視され、デザインにおいて規則に従う必要がないという考えが広まる。 - 現代デザインとデジタル時代:21世紀
現代のデザインは、デジタル技術の急速な発展によって大きく変革された。ウェブデザイン、UI/UXデザイン、3Dモデリングなど、デジタルツールの利用が一般的となる。
参考
https://yusuke-design.net/column/history-design/#google_vignette
- デザインは長らくモノをデザインすることを主な対象としてきた
- デジタルの進展とともに、カスタマーエクスペリエンス、人間を中心とした体験価値に注目が集まり、デザインにおけるコトへの比重が高まる
- 一方、エコデザイン、環境問題へのデザイン的取り組みも大きな流れとなる
- この延長に今日の社会課題のデザインによる解決がある。社会改革の力として大きな期待を寄せられている
- 既存の物事の枠組みを問い直し、変革すること。「リフレーミング」がデザイン力となっている。地域の課題に対してもデザインの持つ力を活用しようと提供されはじめている
- 例:グラミン銀行の取り組み。2006年ノーベル平和賞
日本においても「社会改革としてのデザイン」に目を向けられるようになった。東日本大震災がきっかけではないか?
正しいことを正しく行わないと認められない社会、嘘のつけない社会へとパラダイムシフトが起こった
②デザインの持つ意味がとんでもなく広がった現代
対象の拡大:有形の物質から無形のものへ。仕組みやサービス、体験
プロダクトデザイン→UIデザイン→UX, サービス, ブランドデザイン→ソーシャルデザイン
プロセスの拡大:発想手法や経営とのつながり
デザインエンジニアリング(創造的なデザインと技術的な工学を組み合わせた分野で、製品やサービスの革新を目指す) / デザイン思考 / デザイン経営
テーマの拡大:求められる正しいデザイン。
SDGsなど。デザインに対する社会の要請が大きく変わった。よりよい生活とは本来何か?
関係性の拡大:デジタル社会での生き方、ビッグデータ、AI
主に色や形を中心に考えられていたデザインは、それを維持しつつ、サービスや方法、社会課題といった場面で活用されるようになった
デザインの本来性とは、近代デザインの誕生より現状へのアンチテーゼが根底思想にある。常にアップデートされ続けている
参考文献
※順不同
- 世界はデザインでできている / 秋山具義 著 / 筑摩書房 / 2019年
- デザインはどのように世界を作るのか / スコット・バークン 著 / フィルムアート / 2021年
- 誰のためのデザイン?増補・改訂版 / D.A.ノーマン 著 / 新曜社 / 2015年
- デザインのデザイン / 原研哉 / 岩波書店 / 2003年
- デザインの次に来るもの / 安西洋之, 八重樫文 著 / クロスメディア・パブリッシング / 2017年
- デザインの本質 / 田中一雄 著 / ライフデザインブックス / 2020年
- 柳宗理 エッセイ / 柳宗理 著 / 平凡社 / 2003年
- はじめるデザイン / 浅野 桜 著 / 技術評論社 / 2019年
- コミュニティデザイン―人がつながるしくみをつくる / 山崎 亮 著 / 学芸出版社 / 2011年
- ソトコト (2019年2月号) 地方のデザイン2019 / 梅原真インタビュー / RR / 2019年
- Hello!! Work 僕らの仕事のつくりかた、つづきかた。 / 川島 蓉子, 皆川 明 著 / リトル・モア / 2020年
- デザインノートNo.84:最新デザインの表現と思考のプロセスを追う / 誠文堂新光社
- 勝てるデザイン | 前田 高志 著 / 幻冬舎 / 2021年
- 僕とデザイン / 仲條正義 著 / 株式会社アルテスパブリッシング / 2022年
- 株式会社 TSDO https://www.tsdo.jp/message.html