こちらの記事では、株式会社Hackusha が公開しているポッドキャスト番組「ハクシャヲカケルラジオ」から要約した内容をチラリと公開しています。
トークの内容で興味のある箇所があればこちらの資料も補足としてご覧ください。
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エピソードテーマ:
「世界で一番楽しいITの話」
エピソード5サブテーマ: DXはバズワードなのか?本質なのか?
本編概要
「世界で一番楽しいITの話」エピソード5話目は、トレンドワードとも言えるDX(デジタルトランスフォーメーション)について深堀りする前編。
これまでのIT化とDXは何が違うのか?本当に意味がある?成功事例と失敗事例を見ながら、DXと呼ばれる考え方の本質に迫っていきます。
DXとは
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データ とデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデ ルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競 争上の優位性を確立すること。
IT化とDXの違い
- IT化は業務改善を目的に、アナログなプロセスをデジタル形式へと変換
- 効率化や作業の正しさを向上する
- DXは目的意識・ゴールを持って取り組むことでその先に変革がある
- 「変革」なので、トップの力が必要不可欠
- 部署内ではなく部署を横断して会社全体に影響するプロジェクト
- 誰かを担当者にしてお任せではなく、トップが直接関与する、担当者の強い後ろ盾となる、トップが理解する、コミット力
IT化とは、アナログな業務をデジタルに変換するプロセスを指します。例えば、手書きの伝票を電子的なシステムに変えることが挙げられます。これに対してDXは、単にデジタル技術を導入するだけでなく、ビジネスモデル自体を根本から変革することを目指します。DXは、デジタル技術を活用して競争優位性を確立し、企業の文化やプロセスを再構築するものです。
成功事例: ウチダレック(不動産)
鳥取の不動産会社ウチダレックは、ITを活用して社内の営業方法や情報共有の方法を改革しました。CRM(顧客管理システム)を導入し、社内の情報が見える化されることで、業務の効率化が図られました。これにより、社員の働き方が多様化し、家での業務も可能になりました。また、会社のシステムを新たなビジネスとして提供することで、新たな収益源を確立しました。
成功事例: ゑびや(飲食)
伊勢の老舗食堂ゑびやが独自開発した来客予想システムを皮切りにポスレジなども含む業務全体のデジタル化によって、シフトの適正化やロスの削減を実現しました。この取り組みにより、業務効率が向上し、さらにシステム自体を販売することによる新たなビジネスモデルが生まれました。
成功事例: COHINA(アパレル)
女性向け低身長アパレルブランドの「cohina」は、店舗を持たないオンラインブランド。
彼らはSNSを活用して、365日毎日ライブ配信を行い、フォロワーとの深いコミュニケーションを築いています。この戦略により、ターゲット層に対して価値ある情報を提供し、ブランドのファンを増やしています。ライブ配信では、商品に関する情報だけでなく、ターゲットに合わせたスタイリング提案なども行い、顧客との関係を強化しています。
失敗事例: 7PAY
一方、セブンアイホールディングスの「7PAY」は、セキュリティの問題で失敗した事例です。
不正アクセスによる支払い被害が多発し、サービスは短期間で終了しました。この失敗の原因は、金融業界とサービス業界のセキュリティ認識の違いと、それに対する想像力や対策の不足です。
失敗事例: ブルースターバーガー
コロナ禍の2020年11月に開業したブルースターバーガーは、全面モバイルオーダーとテイクアウト専門のハンバーガーショップでした。低価格で高品質のハンバーガーを提供し、原価率68%を実現。しかし、フランチャイズ拡大のための改変(客席設置、現金対応セルフレジ、サイズアップと値上げ)が強みを失わせ、スマホ注文アプリの作り直しに伴う会員データ喪失も重なり、2022年7月に全店舗撤退。持ち帰り専門とコンビニとの競争を考慮しなかったことが失敗の一因です。
失敗事例: OYO LIFE
2019年3月にインドのOYOが開始したOYO LIFEは、スマホだけで賃貸契約ができるサービスでした。入居者が決まっていなくてもOYOが物件を長期借り上げする形式で、高いランニングコストを抱えることに。日本の文化に適応できず、何度も現地確認を求められるなど、デジタル化が進まず撤退。異文化間の理解不足とリスク管理の失敗が事業に大きな影響を与えました。
失敗事例: 野村證券のラップ口座刷新に伴う日本IBMとの裁判
野村證券と日本IBMは、ラップ口座のシステム開発を契約。しかし、2013年11月にプロジェクト中止が決定し、訴訟に発展。プロジェクト遅延の主因は、野村證券側の度重なる仕様変更要求。仕様の最適化提案が現場担当者の反対により実現しなかったためです。PoCを商品説明会と誤解し、大手企業に丸投げすれば問題ないと考えたことが敗因でした。経営と現場の協力による仕様確認の重要性が問われました。
まとめ
今回のエピソードでは、DXの成功事例と失敗事例を通じて、その本質に迫りました。DXは単なるバズワードではなく、従来のビジネスを現代のテクノロジーに則ってアップデートする方法であり、企業の競争力を高めるための重要な戦略です。
しかし、その成功には、トップの理解と支援、適切なリスク管理が不可欠です。
さて、それではスモールビジネスの経営者、事業責任者にとってはどのようにすれば上手にDXを活用できるのか?次回のエピソードでは、中小企業がDXをどのように応用できるかについて3人が実際に自分たちが出会ってきた身近な事例を元に探っていきます。お楽しみに!
参考文献
※順不同
- インターネット的 / 糸井重里 著 / PHP文庫 / 2001年
- DX失敗学 / 佐伯 徹 / 日経BP / 2023年
- イラストで学ぶコンピュータの歴史 / レイチェルイグノスキー 著 / 杉本舞 訳 / 創元社 / 2023年
- 教養としてのプログラミング的思考 今こそ必要な「問題を論理的に解く」技術 / 草野俊彦 著 / SBクリエイティブ株式会社 / 2018年
- 生成AIで世界はこう変わる / 今井 翔太 著 / SBクリエイティブ株式会社 /2024年
- デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門 / 長尾 一洋 (著) / KADOKAWA / 2022年
- 超DX仕事術 / 相馬正信 著 / サンマーク出版 / 2022年
- 仕事のムダをゼロにする 超効率DXのコツ全部教えます / 内田 光治 (著) / アスコム / 2021年
- 世界一流エンジニアの思考法 / 牛尾剛 著 / 文藝春秋 / 2023年